見つかるはずのない手紙も、ある。
エヴリン・ローズ・ウィットモアは、物をあるべき場所にしまっておくのが得意だった。古い本は本棚に、思い出はページのあいだに、そして失った人々は、安全な過去の中に。
けれどある雨の夜、家族が営む書店で、忘れ去られていた写真集のページから一通の古い手紙が滑り落ちる。
封筒に記されていたのは、エレノア・ヴェインの名前。中に綴られたたった一文が、エヴリンの息を止めた。
*I don't know how to ask you to stay.*(あなたに、どうやって「行かないで」と頼めばいいのかわからない。)
手紙の残りは傷み、文字は長い年月の中に薄れて消えかけている。それでも、途切れた行のあいだに、エヴリンが長いあいだ思い出すまいとしてきた名前があった。
ジュリアン。
忘れられていた一通の手紙は、もう閉じたはずの記憶への扉となる。そして、あのとき勇気がなくて訊けなかった問いへの扉にも。
なぜなら、誰かを失うことの本当のつらさは、手放すことではないから。
あと一つだけ、引き留める理由があったのではないか——そう考え続けてしまうことなのだ。
1話